物納と延納
相続で取得する財産がすべて金融資産であれば、苦労はしません。ただ、こういうケースは残念ながら少ないです。
計画をたてて、納税資金を確保できる場合は問題ないです。
納税資金(現金)を準備できなかった人のために、次の方法があります。
物納と延納です。簡単にまとめてみました。
物納に充てることのできる財産の種類および順位
第1順位 ① 国際、地方債、上場株式、不動産、船舶
② 不動産のうち物納劣後財産に該当するもの
第2順位 ③ 社債、非上場株式、証券投資信託または貸付信託の受益証券
④ 株式のうち物納劣後財産に該当するもの
第3順位 ⑤動産
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物納に充てることのできない財産ー管理処分不適格財産
担保権の設定されている財産 |
抵当権など担保権の設定登記がされている不動産(借入金の返済などをし抵当権等の設定登記を抹消する) |
権利の帰属につてい争いのある財産 |
①所有権の存否または帰属について争いのある不動産 ②借地権、永小作権、賃借権などの権利の存否また帰属について争いのある不動産 |
境界が明らかでない土地 |
①境界標の設置がされていないことにより他の土地との境界を認識できない土地(隣地の所有者等と立会いの 下で境界線を設置して実測図を作成し境界確認書を取っておく。遅くとも物納申請書に添付して提出する 必要がある。 ②借地権など土地使用収益権が設定されている土地の範囲が明確でない土地(土地賃貸借契約書などに図面を 添付し、その境界を明示しておく)。 |
隣接する不動産の所有者との訴訟にならなければ通常の使用ができないと見込まれる不動産 |
①隣地の建物また物納の物納地の建物が境界線をこえている土地。ひさし等で軽徴な越境で隣接不動産の所有者 の同意のあるものは可。 ②土地使用収益権の設定内容、また建物の使用・収益する権利の内容が、設定者にとって著しく不利な土地 (貸地の地代、貸家の家賃などが世間相場に比べて著しく低い場合がこれに当たる。あらかじめ地代、家賃等 を世間相場並みに引き上げておく)。 ③賃貸料の滞納がある不動産その他収納後の円滑な契約の履行に著しい支障を及ぼす事情が存すると見込まれ る不動産。 ④その敷地を通常の地代により国が借り受けられる見込みのない土地上の建物(借地権付建物で地代が著しく 高い場合がこれに相当される) |
無道路地 (通路部分の所有者の通行承諾書をとっておく) |
借地権の設定されている土地で借地権者が不明であるもの |
他の不動産と一体として利用されている不動産 |
①共有物である不動産。その共有者全員が物納する場合は可。 ②がけ地、面積が著しく狭い土地、また、形状が著しく不整形な土地これらのみでは使用することは困難な 土地。 ③私道の用に供される土地、他の物納不動産と一体として使用されているものは可。 ④敷地をともなわない建物だけ。ただし、借地権付建物は可。 ⑤物納以外の不動産と一体となって効用を有する不動産。 |
税法上の耐用年数を経過している建物 *通常の使用ができるものは可 |
敷金等の返還債務とその他の債務を国が負うこととなる不動産 |
①敷地等の返還に関する義務を国が負うことになる不動産。物納申請者が清算すれば可 ②土地区画整理事業等が施行されている場合で、収納までに発生した賦課金等の債務を国が負うことになる 不動産。また、清算金の授受の義務を国が負うことになる不動産。賦課金、精算金を国が引き継がない確認書 を提出すれば可。 |
管理処分するのに過大の費用が生じる不動産 |
①土壌汚染対策法に規定する特定有害物等により汚染されている土地。 ②廃棄物の処理及び清掃に関する法律に規定する廃棄物等が地下にある不動産。 ③農地法の規定による許可を受けずに転用されている土地。 ④土留等の設置、護岸の建設その他現状を維持するための工事が必要となる不動産。 |
公の秩序・善良の風俗を害するおそれのある目的で使用されている不動産 |
①風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に規定する風俗営業または性風俗特殊営業等の業の用に 供されている建物及びその敷地。 ②暴力団員による不法な行為の防止等に関する法律の規定する暴力団の事務所等の施設の用に供されている 建物及びその敷地。 |
引渡しに際して通常な行為がされていない不動産 |
①物納土地上の建物が既に滅失している場合で、建物の滅失登記がされていない土地(滅失登記をしておく) ②廃棄物の処理及び清掃に関する法律に規定する廃棄物等が除去されていない不動産(廃棄物を除しておく) ③生産緑地法に規定する生産緑地で、「買取りの申出がされていないもの」(買取の申出をしておく) |
上記の現状に対しての提起されている条件は一般の不動産売買での引渡し条件でも参考になります。
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物納劣後財産(不動産の場合)
つぎに揚げるような財産は、他に物納に充てるべき適当な財産がない場合に限り 物納に充てることができる。 1.地上権、永小作権もしくは耕作を目的とする賃借権、地役権または入会権が設定されている土地 2.法令の規定に違反して建築された建物及びその敷地 3.土地区画整理法による土地区画整理事業等の施工に係る土地につき仮換地または一時利用地の指定がされ ていない土地(当該指定後において使用または収益をすることができない土地を含む) 4.現に納税義務者の居住の用または事業の用にきょうされている建物及びその敷地(当該納税義務者が当該 建物及びその敷地について物納の許可を申請する場合を除く) 5.劇場、工場、浴場その他の維持または管理に特殊技能を要する建物及びこれらの敷地 6.建築基準法第43条第1項に規定する道路に2メートル以上接していない土地 7.都市計画法の規定による都道府県知事の許可を受けなければならない開発行為をする場合において、当該 開発行為が開発許可の基準に適合しないときにおける当該開発行為に係る土地 8.都市計画法に規定する市街化区域以外の区域にある土地(宅地として造成することができるものを除く) 9.農業振興地域の整備に関する法律の農業振興地域整備計画において農用地域として定められた区域内の 土地 10. 森林法の規定により保安林として指定された区域内の土地 11. 法令の規定により建物の建築をすることができない土地(建物の建築をすることができる面積が著しく 狭くなる土地を含む) 12. 過去に生じた事件または事故その他の事情により、正常な取引が行われないおそれがある不動産及び これに隣接する不動産 |
なっている財産(不動産)。
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延納
相続した財産で大部分が不動産で、現金はわずかしかない。
これが一般的なのケースです。
各相続人の相続税額が10万円を超え、現金で納付することが困難な場合、
その困難である金額を限度として、分割して納められる制度が延納制度です。
延納の申請は、延納制度を利用し、納付が不可能な場合に各相続人ごとに申請することになります。
ここでは、簡単に、延納により納付することができる金額(延納許可限度額)と納付期間(利子税もかかります。)
をまとめておきます。
次にある項目を算出して延納許可限度額を求めます。
①納付すべき相続税額
②納期限において有する現金、預貯金その他の換価が容易な財産の価格に相当する金額
③申請者および生計を一にする配偶者その他の親族の3か月分の生活費
④申請者の事業の継続のために当面必要な運転資金(経費等)の額
⑤納期限に金銭で納付することが可能な金額(現金納付額)
⑥延納許可限度額
上記の
②-③-④=⑤
②から③と④を引いた金額は、
⑤が納期限に金銭で納付することが可能な金額とされます。
申請者の①(納付すべき金額)から⑤(現金納付額)が⑥(延納許可限度額)
として認めら、この範囲内で延納が許可されます。
また、延納申請にあたっては、延納金額に見合う担保を提供しなければなりません。
*通常の不動産については、時価の80%で評価されます。相続税の延納の利子税(年利率)
不動産等の割合 | 区分 | 延納機関(最高) | 利子税 (本則) |
令和1年の適用利率 |
50%未満 | 5年 | 6% | 1.3% | |
50%以上 | 不動産等部分 | 15年 | 3.6% | 0.7% |
その他の部分 | 10年 | 5.4% | 1.1% | |
75%以上 | 不動産等部分 | 20年 | 3.6% | 0.7% |
その他の部分 | 10年 | 5.4% | 1.1% |
延納をしている途中で分納の支払いを滞納している場合には延納の許可が取り消されます。
さらに滞納がつづけば、高利率の延滞税が課せられ、やがては、差押え、公売になってしま
います。
そうならないために、分納中に、税務署長の許可を取り、納期の延長をしてもらうことも
可能です。
延納の延長をしても納めることが難しい場合には、その金額を限度として物納に切換えられる
制度があります。その制度は相続税の納期限から10年以内に申請し、物納する財産は、上記
に記載した物納適格財産になります。
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さらに滞納がつづけば、高利率の延滞税が課せられ、やがては、差押え、公売になってしま
います。
そうならないために、分納中に、税務署長の許可を取り、納期の延長をしてもらうことも
可能です。
延納の延長をしても納めることが難しい場合には、その金額を限度として物納に切換えられる
制度があります。その制度は相続税の納期限から10年以内に申請し、物納する財産は、上記
に記載した物納適格財産になります。
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byエステート丙(ひのえ)since 2014