配偶者控除と配偶者居住権
ここでは、相続が発生した場合に配偶者控除と令和2年4月より民法改正により
新たに加わって配偶者居住権の簡単な要旨をまとめてあります。
主に1次相続時点での、配偶者控除を活用した場合のメリットを簡単な事例で
まとめてみました。
通常の相続税の基本的な計算と比較して、軽減される税額を比較してみてください。
配偶者控除の軽置
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配偶者がいる場合には配偶者について相続税の軽減措置があります。
・配偶者の取得した遺産が法定相続分
・1億6,000万円のどちらか多い金額
が軽減されます。
前記の設例で
純資産額1億7,500万円より基礎控除額を引いた課税遺産総額は1億2,700万円でした。
これを法定相続人ごとに法定相続分によって分割すると、
配偶者 127,000,000円 × 1/2 = 635,000,000円
子A 127,000,000円 × 1/4 = 31,750,000円
子B 127,000,000円 × 1/4 = 31,750,000円
となり、法定相続分に応じる取得金額を基にして、相続税の速算表を用いて
各人の相続税額を求めると
配偶者 127,000,000円 × 30% - 7,000,000円 = 12,050,000円
子A 127,000,000円 × 20 % - 2,000,000円 = 4,350,000円
子B 127,000,000円 × 20 % - 2,000,000円 = 4,350,000円
合計 20,750,000円
このように求めた各人の相続税額の合計2,075万円が相続税額の総額ですが
配偶者のいる場合には、配偶者の軽減措置があるため、配偶者の取得する遺産に
よって、全体の相続額が変わってきます。
さらに例として
配偶者が法定相続分の50%、子Aが40%、子Bが10%の割合で取得した場合
配偶者 20,750,000円 × 5/10 = 10,375,000円
子A 20,750,000円 × 4/10 = 8,300,000円
子B 20,750,000円 × 1/10 = 2,075,000円
配偶者の取得分は課税価格の 1/2 以内であるから軽減され、納付する税金は
(子Aの分)8,300,000円 + (子Bの分)2,075,000円 = 10,375,000 円となる。
次に配偶者が20%、子Aが60%、子Bが20%を取得した場合には、
配偶者 20,750,000円 × 2/10 = 4,150,000円
子A 20,750,000円 × 6/10 = 12,450,000円
子B 20,750,000円 × 2/10 = 4,150,000円 となり、納付する税額は
(子Aの分)12,450,000円 + (子Bの分)4,150,000円 = 16,600,000円 となる。
この例でみてもわかるように、配偶者の取得割合が多くなればなるほど、全体の納付額
は軽くなるようになっています。
限度は・配偶者の取得した遺産が法定相続分
・1億6,000万円のどちらか多い金額まで
この場合には、純資産総額は1億7,500万円であり、配偶者の法定相続分は、
175,000,000円 / 2 = 87,500,000円 で1億6,000万未満であるので
配偶者が課税価格のうちの1億6,000万円分を取得した場合が
相続税がもっとも低くなる。
すなわち、
20,750,000円 × 160,000,000円 / 175,000,000円 ≒ 18,970,000円となり、
この全額が軽減の対象となり、子Aと子Bとが取得した1,500万円に対応する、
20,750,000円 × 15,000,000 / 175,000,000円 ≒ 1,778,000円 が収める税額となる。
すなわち、その他の相続人が2人で177万8,000円を納めればよいこととなる。
配偶者の軽減措置を受けるためには
①まず、その対象となる財産を配偶者が実際に取得しなければならない。
*申告書のなかだけ取得したことに計算しても認められない。
②そのためには、少なくとも配偶者についての遺産分割が申告期限まで済んでいることが必要。
③もし、申告期限までに遺産分割が終わっていないときは、とりあえず、配偶者の軽減措置は
受けないものとして申告し、納税し、その後、3年以内に分割し、それから4か月以内に更生
の請求という手続きをとって、軽減分の税金を還付してもらうようにする。
④配偶者は婚姻届を出して正式に戸籍に入っていなければならない。
*内縁関係では認められない。
⑤申告書につぎの書類を添付する。
・戸籍謄本
・遺産分割協議書など配偶者の遺産取得を証明するもの
・未分割遺産について、将来適用を受ける場合には、未分割の事情と分割予定などを記載した書類
相続税の優遇措置と贈与税の特別控除
配偶者が生前に居住用の土地・建物の贈与を受けた場合に2,000万円までは
贈与税を課税されないという特例があります。
配偶者の贈与税の特別控除については、贈与を受けてから3年以内に相続が
開始しても、特別控除の適用を受けた部分については、相続税の財産に加算
しないことになります。
(一般の贈与の場合には相続開始3年以内に贈与を受けていた場合には、
その贈与財産を相続財産に加算して相続税を計算し、すでに納付した
贈与税は相続税から差引いて清算するようになっています。)
蛇足ですが、相続によって取得した土地・建物の不動産取得税は非課税です。
贈与によって取得した土地・建物は不動産取得税の課税対象になります。
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配偶者居住権
令和2年4月より民法が改正になりました。
その中の1つに、配偶者の居住権の保護(配偶者短期居住権)があります。
これ簡単に言うと、相続開始の時に遺産対象となる建物に、 その配偶者が居住していた場合に、遺産分割が終了するまで、無償で居住できる権利ということです。
(新民法1037条~1041条)
そして、遺産分割で、配偶者がその建物の所有権を取得しないで、他の相続人が、その建物の所有権を取得したときは、配偶者は、配偶者居住権を取得し、この権利は、配偶者の生存中続く。その権利を登記したときは、第三者にも対抗できる強い権利となる。配偶者は一生涯、安心して住み続けることができる。
( 新民法1024条~1035条)
これって 、普通の感覚からすると、当たり前のことだと思えるけど、わざわざ法律にまでなっている?。
今の時代は便利になったとは言え、生活にお金がかかり過ぎる。
何をするにも、金、金、金。
それに、平成26年度から相続税の基礎控除の金額が下げられて、最高税率も上がった。
今まで以上に高い相続税を支払うことになるわけです。
相続税?って明治38年に始まったらしい。
日露戦争で戦費を賄うために。それ以降、今まで継続している。でも、昔は今よりも、徴収がゆるやかだったと
年老いた地主さんが言っていた。(その方はもう亡くなったけど)
それに、昔は、家督相続がメインで、遺産はほぼ、家長である長男が引き継ぎ、
相続の時に家族間の争いはほとんどなかった。
弊社のお客さんでも、遺産分割で調停中の方がおります。
親子や血を分けた兄弟なのに、骨肉の争い。
こんな中で、配偶者(母親)が居場所を確保できないほど、子供たちに追い込まれているケースが増えているのか?
そんなことを 連想してしまう内容の法律に思える。
ただ、メリットとして、
配偶者居住権という権利を設定すると、土地・建物の相続税の評価額を下げることができるといわれています。
例えば、土地・建物を相続人の息子さん名義に登記して、その建物に配偶者居住権を設定する。
そうすると、簡単にですが、
(建物の評価額)-(配偶者居住権の価格)=建物の所有権の評価
(土地の評価額)-(土地に対する配偶者居住権の価格)=土地の所有権の価格
こうやって、相続資産を下げながら税金対策して、配偶者の控除額いっぱいまで、他の資産を組み込んで少しでも残すといったイメージです。
*配偶者の控除額は、相続財産の2分の1、または1億6,000万円まで、非課税だから。
それに、1次相続の時点で子供名義に財産を移しておけることでしょうか。
そうすれば、2次相続の時点で相続税の心配は減ります。
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byエステート丙(ひのえ)since 2014