簡単な相続税の計算の仕方とその時点での問題点
相続税を計算してみましょう。
何事もそうですが、最初からいっきにやるとわからないです。
まず、基本的なことを把握しながら、次のよくある例でステップを踏んで読み進めてみてください。
相続の順位 相続のパータンとして主に次の3つがあります。
第1順位 配偶者と子
第2順位 配偶者と両親だけのとき
第3順位 配偶者と兄弟姉妹
法定相続分
相続人 | 法定相続分 | 法定相続分 |
配偶者と子 | 配偶者 1/2 | 子 全員で1/2 |
配偶者と直系尊属 | 配偶者 2/3 | 直系尊属全員で 1/3 |
配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者 3/4 | 兄弟姉妹全員で 1/4 |
ここでは、平均的な相続のパターンとして相続人が 配偶者と子(第1順位) の場合で計算してみます。
お父さんがなくなりました。相続人はお母さん(配偶者)と子が2人の場合です。相続人は合計3人です。
Aの時点の作業 (Step 1)
まず最初の作業として、被相続人の全財産を計算します。(金額も大きくして)
①金融資産 ここでは、 預貯金が¥100,000,000-円(1億円)
②不動産 など 土地(更地)¥80,000,000-円 (8千万円)
相続人の全財産を合計すると¥180,000,000-円(1億8千万円)になります。
Bの時点での作業(Step 2)
次に、被相続人の葬儀などにかかった費用を合計します。
次に、被相続人の債務(ご遺族に残した借金)を合計します。
ここでは、葬儀に500万円かかったとします。
そして、借金はありませんでした。0円です。
Cの時点での作業(Step 3)
では、純資産総額を次の式で計算します。
相続人の全財産 - 債務・葬式費用 = 純資産総額
¥180,000,000円 - ¥5,000,000円 =175,000,000円
Dの時点での作業(Step 4)
次に 基礎控除の金額を計算します。(課税されない部分です。)
これは、単純に法律で決まっています。
基礎控除額
[3,000万円 + 法定相続人の数(ここでは、3人です。)× 600万円]
上の式から
3,000万円 + 3人 × 600万円 = 4,800万円になります。
Eの時点での作業(Step 5)
次に純資産総額から基礎控除額を差し引いて課税価格を求めます。
純資産総額 - 相続税の基礎控除 = 課税価格
175,000,000 - 4,800万円 = 127,000,000万円 が課税価格です。
Fの時点での作業(Step 6)
次に
各相続人の法定相続分を算出します。
法定相続分
相続人 | 法定相続分 | 法定相続分 |
配偶者と子 | 配偶者 1/2 | 子 全員で1/2 |
配偶者と直系尊属 | 配偶者 2/3 | 直系尊属全員で 1/3 |
配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者 3/4 | 兄弟姉妹全員で 1/4 |
まず、配偶者が 1/2 です。
次に 子 が 1/2 です。(ここでは子は2人います。
配偶者は
127,000,000 × 1/2 = 63,500,000円 です。
子は(2人います)
127,000,000 × 1/2 × 1/2 = 31,750,000 円 になります。
Gの時点での作業(Step 7)
次に下の ≪相続税の速算表≫ をご覧ください。
(平成27年1月1日以後の相続)
法定相続分に応ずる所得金額 | ||
税率 | 控除額 | |
1,000万以下 | 10% | ー |
1,000万超 3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万超 5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万超 1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超 2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超 3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超 6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
それぞれの法定相続分での取得金額に応じて計算してみます。
まず、お母さん(配偶者)の場合
63,500,000円ですから
63,500,000円 × 30 % - 7,000,000円 = 12,050,000円・・・①
次に、お子さんが2人います。それぞれをA・Bとします。
A子さんは法定相続分の取得金額が 31,750,000円 ですから、上記の表に合わせて
31,750,000円 × 20% - 2,000,000円 = 4,350,000円・・・②
B子さんの法定相続分の取得金額もA子と同じく、
31,750,000 × 20% - 2,000,000円 = 4,350,000円・・・③ になります。
Hの時点での作業(Step 8)
次に、算出した法定相続人の全員の法定相続分の取得金額を合計します。
①+②+③ = 1,205万円 + 435万円 + 435万円 = 2,075万円になります。
この金額が納付する相続税の総額になります。
Iの時点での作業(Step 9)
この算出して出した金額¥2075万円を各相続人の取得割合に応じて
税金を納付することになります。
それぞれ、相続した財産が、法定相続分どおりでしたら、
上記の配分で済みますが、実際にはこの通りにいかないのが相続問題です。
「はい、計算方法はわかりました。簡単です」と、では、
同じように、ご自分のケースで計算してくださいと言われても、問題が出ます。
まず、
Aの時点(Step 1)で出る問題として
相続財産がすべて金融資産(現金・定期預金・その他預貯金・株式・ゴルフ会員権等) で金額が
すぐにでも明確に出る場合はそれほど、難しくはないでしょう。
実際には、相続人の財産の大部分は、金融資産よりも、むしろ不動産(土地・建物)です。
では、評価はどうするのか?
上記の例では単純に更地の場合ですから、さほど難しくはないですが
不動産の現況・状態によっては、特例にあてはまる場合等、納付する相続税が違ってきます。
・生前贈与
・土地・建物の評価
・小規模宅地の特例
Bの時点(Step 2)で出る問題として
葬儀の費用などは葬儀の後で葬儀屋さん、お寺さんとのあいだで清算すれば、費用は 明確に出ます。
上記の例では、債務(借金)は¥0円でしたので、問題はありませんでした。
実際の現場では、もし、債務があれば、清算することになります。
不動産の場合は登記簿に抵当権などがついていれば、その時点での借入残額など借入先に確認し、
清算することになります。
逆に不動産以外の借入額があったとすれば、確認がたいへんな場合もあります。
一般的にはこの段階で、たとえば、相続財産の土地上にアパート等を建てていて、その建築に
要した建築費などを借入している場合が多いです。
そこで、資産価値が¥80,000,000円(8千万円)の土地に1億円の負債残額があったとした場合。
プラスの資産とマイナスの資産を同時に相続することになります。
この場合、マイナスの2,000万円になります。
このぐらいは、遣り繰りできますか?
では、それ以上の負債(借入金)があった場合どうしますか?
相続は、被相続人が有した一切の権利義務を、一身専属兼を除いてそのまま承継する制度です。
相続には、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も承継することになります。
しかし、たまたま発生した相続によって、相続人の経済生活が脅かされる事態にもなりかねません。
稀にあります。
その場合、法律では相続人が相続をどうするか? 選択することになります。
単純承認 :無制限に相続人の権利義務を承継する
限定承認 :相続によって得た資産額の限度でのみ負債を負担するという相続の方法
相続の放棄 :相続人の権利義務を一切承継しない
Iの段階(Step 9)で出る問題として
上記の事例では、被相続人(父親)が亡くなり、相続人にはお母さん(配偶者)が健在でいる場合です。
一般には1次相続といわれています。
この場合、かなりの金額での軽減措置が取られています。下記(配偶者控除)を参照ください。
・配偶者控除
数年後に、今度は、お母さんがお亡くなりになってしまった場合は、 上記の配偶者控除は使えません。
一般に2次相続といわれています。
このコースでよく相続人である兄弟姉妹の間でよくもめる(争いのある)場合が多いです。
*ここでは、調停や訴訟になるケースまではご勘弁ください。(その場合は、弁護士さんへ)
・遺産分割と遺留分
・遺産分割と遺留分
税金を納付する段階で現金がなかった場合
・延納・物納
byエステート丙(ひのえ)since 2014